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最高裁判所第三小法廷 昭和35年(オ)229号 判決 1961年1月24日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人小林亀郎の上告理由第一点について。

しかしながら、会社は本店所在地において設立の登記をすることによつて成立し、法律上会社として実在するに至るのであり、実在する会社がたまたま手形振出人となつた場合に、登記簿上の本店所在地と異る肩書地を記載したからといつて、その肩書地によつて会社の法律上の実在性が左右され、その存在が否定されなければならぬ理由はない。原判決の確定するところによれば、本件手形には被上告人を代表取締役とするチクマ石油株式会社が振出人として記載されているが、チクマ石油株式会社は被上告人を代表取締役とし、東京都大田区入新井五丁目二五一番地に本店を有する会社として登記され、その後(本件手形振出後)、その商号は加藤石油株式会社、次いで東洋産業株式会社に順次変更されたけれども、登記簿上現在存続する会社であり、本件手形は被上告人が右の実在せるチクマ石油株式会社の代表取締役たる資格で振出したものと認められるというのであるから、たまたま振出人の肩書地が東京都目黒区中目黒三ノ一〇九五と記載され、登記簿上の本店所在地と同一でないからといつて、振出人たるチクマ石油株式会社が存在しないものということはできないとの趣意の原判決の判断は正当であり、かかる場合に被上告人の振出人としての責任を否定した判断も未だもつて違法ということはできない。引用の判例は適切でなく、所論は独自の見解に出でたものであつて採用できない。

同第二点について。

所論の点に関する原判決の判断は不当でなく、所論は採用できない。

同第三点について。

原判決は、本件手形振出人の表示と乙第一号証の登記簿抄本とによつて所論同一性を肯定しているのであつて、その認定は是認し得ないものではなく、所論の違法は認められない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 河村又介 裁判官 島 保 裁判官 高橋潔 裁判官 石坂修一)

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